【獣医師監修】犬にお酒は絶対にNG!その理由と飲んでしまった場合の危険について解説!【最新版】

【獣医師監修】犬にお酒は絶対にNG!その理由と飲んでしまった場合の危険について解説!【最新版】

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頼定 大和

獣医師

頼定 大和

日本獣医生命科学大学卒。大学卒業後、沖縄の病院にて臨床経験を積み、関東、北陸で動物病院の院長として病院経営を行う。 現在は企業病院およびペット関連事業のコンサルティングに携わる。 また、猫の感染症や遺伝病の分野において大学と共同研究に取り組んでいる。講師歴:広島アニマルケア専門学校、日本獣医生命科学大学 動物病院経営学etc. https://okinawa-ahg.com/

わざわざ愛犬にアルコールを飲ませようと思う飼い主はいませんが、目を離したすきなどに誤って犬がアルコールを摂取してしまった、というケースもあるようです。犬がアルコールを飲んでも体に悪影響はないのでしょうか。飲んでしまった場合、どんな症状が出ることがあるのでしょうか。詳しく解説していきます!

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アルコールは体内でどうなるの?

そもそも、アルコールを飲むと体内ではどのような変化が生じるのでしょうか?犬はアルコールを分解する酵素を持っていないことは見てきましたが、人間の場合アルコールをどのように分解するのかを見てみましょう。

アルコールが分解される過程

アルコール(エチルアルコール)は、体内に入った後血液に乗って肝臓へと運ばれます。肝臓では、アルコールがアセトアルデヒドに酸化され処理されます。

アセトアルデヒドは有機化合物の一つですが、人体にとってはアルコールそのものよりもさらに有害な物質です。

これを処理する能力は遺伝や個人差などによって違いがあるものの、人体に残ると2日酔いや悪酔いの原因になります。お酒を飲むと顔が赤くなるのもアセトアルデヒドの作用によります。アセトアルデヒドが血管を拡張するためです。

さらに、肝臓で処理できない分は残留してしまい、その毒性により肝臓へダメージを与えます。処理できる量であれば、肝臓はアセトアルデヒドを酢酸へと変換します。

アルコール脱水素酵素という酵素タンパクによって変換するのですが、人間の体はさらにマイクロソーム・エタノール酸化系という仕組みを有しており、次第に処理能力を増すようになっています。

そのため、犬には全く処理できないアルコールでも、人間は飲んでいるうちにお酒に強くなっていくという能力を有しているのです。

酢酸はさらに水と炭酸ガスへと代謝されます。この仕組みのおかげで、人間はお酒を飲んでも健康でいることが可能になっています。しかし、アセトアルデヒドは毒性が非常に強いため、肝臓に負担をかけます。処理するには酵素が必要であり、血液も使用します。

そのような理由から、お酒に強い人でも、習慣的な飲酒や飲み過ぎは肝硬変など障害を発生させる原因となります。ごく最近の研究では、週にワインを1本飲むのはタバコを5本吸うのと同じガン発症のリスクを持っているとされています。

急性アルコール中毒の危険性

アルコール依存

grynold/shutterstock.com

犬がアルコールを摂取した場合は、処理する能力が備わっていないために毒素の影響をずっと受けることになります。加えて、致死量が非常に少ない犬は急性アルコール中毒に陥る危険性が非常に高く、一気に危篤状態になってしまうかもしれません。

人間でも死者が毎年出ている、この急性アルコール中毒とはいったい何でしょうか?

急性アルコール中毒とは?

忘年会や新入生歓迎会の時期に頻発する急性アルコール中毒は、アルコールを一気に摂取することで生じる脳の極度のマヒ状態を指しています。アルコールを短時間で大量に飲むことにより、意識に障害が発生します。

通常、アルコールを飲むと血中のアルコール濃度が上がり、ほろ酔いと呼ばれる状態では0.02~0.1パーセント程度の濃度になっています。これが0.3パーセントを超えると泥酔期と呼ばれるもうろうとした状態になり、0.4パーセントを超えると昏睡期と言う命にかかわる状態となります。

これらはあくまで一般的かつ統計的な数値であり、犬のケースと同じように、個人差によってより早くより少量で昏睡状態に陥ってしまう人もいます。

泥酔以上の状態で、意識レベルの低下、嘔吐、血圧低下、呼吸運動の乱れ・呼吸困難などの症状が見られるようになります。このように急激に血中アルコール濃度が上がってしまうと、呼吸機能や循環器系の機能がマヒして死亡するか、嘔吐物をのどに詰まらせて死亡するリスクが高まります。

よくある「飲んでいた間の記憶がない」というのも、泥酔に該当する症状です。昨晩の様子を思い出せないことは多々あるという場合、習慣的に泥酔状態になっている可能性があり、そこからさらに飲んでしまうと昏睡期に突入するリスクをはらんでいることになります。

急性アルコール中毒に陥ったら

人間の場合でも犬の場合でも、急性アルコール中毒になると出来るだけ速い対処が必要になります。呼吸をしているか、脈があるかが最初の生死の分かれ目となり、気道確保や横向きに寝かせることなどが基本的な対処法となります。

呼吸を司る中枢神経がマヒする危険性があるため、あごを前に出して呼吸しやすい状態を確保しましょう。犬の場合でも、嘔吐物を詰まらせて窒息する危険性があります。横に寝かせて嘔吐物が流れるようにしましょう。

意識がないと嘔吐をコントロールできないため、無理に吐かせたり水を飲ませたりすることはやめてください。アルコールの影響を強く受ける犬の場合は神経が影響を受けやすく、水を飲ませるだけでは浄化することもできません(胃洗浄や活性炭の投与が不可欠)。

応急処置を施した後は、すぐに動物病院の通常の連絡先や緊急外来の番号に電話して、出来るだけ早く適切な処置を受けさせることが何よりも重要です。

まとめ

お酒はダメ

riccar/shutterstock.com

以上のような理由から、犬にアルコールを与えるのは絶対にやめましょう。猫の場合も全く同じです。人間でも毎年アルコールが原因で大勢の方が亡くなっています。それほどリスクのある飲み物を、処理する機能をまったく持っていない犬に与えてしまうと、一瞬で昏睡期に突入してしまう危険性があります。

犬のアルコール摂取に関しては、驚くほど周知が進んでいないのも原因の一つかもしれません。いずれにしても、悪ふざけや酔って寝てしまった隙に、あるいはこぼした瞬間に飲んでしまうことのないように、私たち飼い主は十分気を付けていきたいものです。

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