なかなか知られていないプリズンドッグプログラム。その内容や効果とは?

なかなか知られていないプリズンドッグプログラム。その内容や効果とは?

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mofmo編集部

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最近はいろんなところで行われているプリズンドッグプログラムですが、なかなか他では知られていません。 今回は、そんなプリズンドッグプログラムについてお話していきます。

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プリズンドッグ・プログラムの成果

Prison bars and a hallway

txking/shutterstock.com

プリズンドッグ・プログラムは、受刑者・犬・行政・地域社会など、広い範囲で画期的かつ長期的なメリットをもたらしています。

これから一つ一つを詳しくご紹介していきたいと思います。

囚人達の人格が向上する

プログラムが始まると、人間に心を閉じて言うことを聞いてくれない犬達と接することによって、気持ちが通じないことや、思い通りにいかないもどかしさに直面します。

しかし、そんな犬達を三ヶ月間24時間つきっきりで世話し、トレーニングをしなければならないので、イライラして自分の怒りをぶつけたり、知らんふりをして投げ出すわけにはいきません。

専門家のサポートを受けながら根気強くプリズンドッグと向き合うことによって、犬の気持ち(自分以外の気持ち)に目を向けるようになったり、思い通りにいかないときでも辛抱すること、また諦めないことなどを受刑者は学んでいきます。

つまり、問題のある犬を理解し世話しようとすることによって、思いやり、洞察力、忍耐力などの良い特質を身につけることができるのです。

そして、犬が心を開いてくれるようになり、ぎこちなかった関係から少しづつ信頼関係が育まれてくると、愛情が芽生え、優しい気持ちになっていることに気づきます。

受刑者の中には、生まれて初めてそのような感情を抱き、プリズンドッグ・プログラムを通して愛や優しさを知る人もいるそうです。その頃になると、問題のあった犬も、世話をしてくれる受刑者のことを心から信頼し、献身的な愛を示すようになります。

家庭に溢れているべき無条件の愛情を、刑務所で学ぶのも皮肉な話ですが、無私の気持ちで愛情を注ぎ、かつ受けるという経験は、受刑者の心を満たし、穏やかで優しい気持ちを作り出してくれます。

さらに、こんなにも愛おしい犬が、プリズンドッグにならなければ殺処分になっていた可能性が高いことを考えたり、自分と別れてからのその犬の幸せを願う時に、一つの命の重さが心に迫ってきます。

そして”一つの命を救って自分が育て上げた”という実績は、受刑者に自信と達成感を与え、自尊心の回復や、正しい自己価値を持つのにも役立ち、精神的に安定したバランスのとれた人間になるのを助けてくれるのです。

囚人の間に協調性が生まれる

同じ房に収監されている受刑者が二人一組になって、一頭のプリズンドッグをトレーニングするので、必然的にパートナーとなる受刑者との共同作業がしいられます。

同じ目的を持って、思い通りにならない犬の世話をしていると、どうすれば良いのかを相談したり、お互いの意見を述べ合ったり、建設的なコミュニケーションや協力の精神が育まれるようになります。

またパートナーだけではなく、同じようにプリズンドッグ・プログラムに参加している他の囚人達とも仲間意識が芽生え、お互いにアドバイスを求めたり、うまくいった方法などを教えあったりして絆が生まれるそうです。

犬を連れていると、見知らぬ人とも自然と会話が始まったり、同じ犬種を飼育していると親近感を感じたりしたことはないでしょうか。また、犬を飼っている方の多くは、犬が家族を一致させたり、明るい雰囲気を作るのに一役買っていると言われることも多いです。

きっと同意していただけると思いますが、プリズンドッグだけではなく、家庭犬も含めどんな犬にも人の心をリラックスさせたり、潤滑なコミュニケーションのきっかけになったり、人と人を結びつける力があります。

受刑者の多くも、他人に心を閉ざしていたり、拒絶していていたとしても、プリズンドッグとの心の交流で心がやわらくなると同時に、愛犬家同士の絆や、犬を介することによるソフトな人間関係が気づけるようになるのです。

他者を受け入れることや、仲間と上手にコミュニケーションを取ること、人のアドバイスを聞くこと、助け合うこと、建設的な目的のために共に頑張ることなどをプロジェクトを通して学ぶことができるので、受刑者の間の人間関係がよくなります。

協調性を持ち、仲間や周りにいる人と良い人間関係を築くことは、刑務所の中だけではなく、どこの社会でも必要なことなので、プリズンドッグ・プログラムを成功させるだけでなく、社会復帰を成功させるのにも役立ちます。

再犯率が下がる

ここまでで、このプロジェクトに参加することによって、受刑者の人格特性や言動が改善されることがわかりました。

これはすごいことではないでしょうか。皆さんご存知のように、既に形作られた人格を変化させることや、長年してきた生き方を変えることは、とても難しいことです。啓発本を読んだり、自分の力だけでやろうと思ってもなかなかうまく生きません。

ましてや、刑務所に入るほどの罪を犯した人となると、改善するべき点が多いことも容易に想像できます。ですから、強力な動機付けや、継続的に努力したいと思える存在、そうする目的などが必要ですよね。

プリズンドッグはその役割を果たしてくれます。受刑者の考え方や感じ方を矯正してくれ、ただ犬と一緒に過ごす間だけでなく、その後の受刑者の生き方を良くするための力になってくれるのです。

心から大事に思う存在ができることによって、自分の命、他人や動物の命を尊ぶようになり、自分を含めどんな命も危険に晒すことがないように決意できます。これは犯罪を犯すまいという大きな動機付けになってくれます。

また、プリズンドッグ・プログラムでは、担当した犬の日報台帳や観察結果をなどを記入したり、里親候補の要望に応えるために、健康状態や施設での訓練履歴などの情報を管理するなどの事務処理も含まれています。

これらの書類仕事や情報管理などのスキルや習慣は、出所してから新しい仕事につくのに有利になったり、仕事を始めてからもスムーズに進めることができる訓練になります。

さらに、ペットシッターやトレーナー、施設訓練士、ペットカウンセラーのライセンスを取ることもできたり、就職先を斡旋してもらえることもあるので、社会復帰に欠かせない”仕事”を得ることができるのです。

心が整えられると同時に、事務能力や仕事をするルーティーンも身につけることができるので、社会に馴染みやすく、出所後に犯罪を犯す率が低くなっているという報告が多く見られています。

犬が人間を信用するようになる

心身ともに傷ついている犬達は、人間に不信感を持ち、恐れを抱いたり、拒絶したりします。

そのような状態で刑務所に連れてこられるわけですが、プログラムに参加している訓練された囚人達がじっくり向き合うことによって、少しずつ心を開いていくようになります。

このプログラムでは、適切な食事、広々としたドックランで思いっきりする運動など、愛情を持ってくれる人達との触れ合いなど、犬が必要とする基本的な世話をしっかり受けることができます。

過去に受けたひどい扱いやトラウマを完全に消すことはできませんが、心身ともに回復できる環境に置かれた犬達は、優しい人間がいること、一緒にいても安心できる人もいることを新しく心と頭に記憶していくのです。

刑務所では、担当の受刑者だけでなく、他の受刑者とも接する機会が多いので、特定の人だけでなく、人自体になれやすくなるというメリットもあります。

犬は刑務所にいることや、自分を世話しているのが罪を犯した囚人だということは関係ありません。人間のような先入観はなく、新しい飼い主、自分を可愛がってくれる人とシンプルに考えます。

それは、受刑者の心を開くことにもつながり、お互いに心の交流を深めるのに良いことと言えるでしょう。

新しい飼い主が見つかる

プリズンドッグ・プログラムでは、里親動物収容計画に基づき、犬の健康チェック、去勢手術、マイクロチップの装着なども行われます。

また、基本的なしつけも行われるので、プログラムが終了した段階で、安心して里親に迎え入れることができる犬になっているのです。

これは犬にとってとても大きなメリットです。健康状態が良くきちんとしつけられた犬ということで、スムーズに新しい飼い主を見つけることができ、歓迎されながら新しい暮らしを始めることができるのです。

辛い思いをした犬だからこそ、今度こそ、優しい飼い主さんに可愛がられて、幸せに暮らしてほしいと思いますよね。

一般家庭にもらわれるだけでなく、特別な訓練を受けたプリズンドッグは、セラピー犬、盲導犬、介助犬など社会に貢献する犬として、人間のサポートをする場合もあります。

素晴らしい変化ではないでしょうか。殺処分を待っていた犬が、社会に貢献する有能な犬にまでなれるのです。

行政のコスト削減

動物管理センターは殺処分のコストを大幅に削減し、刑務所側は受刑者の再犯率を下げることによって受刑者にかかる年間コストを削減できます。

また、受刑者が動物の世話をすることによって行政側の人件費が削減できたり、様々な動物ボランティア団体が里親活動を共同でできたり、多くのメリットがあります。

まとめ

傷を負った犬と人間が一つのプログラムを通して、傷を癒しあい、回復していくだけでなく、社会貢献までできる素晴らしいプロジェクトが、プリズンドッグ・プログラムなのです。

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