【獣医師監修】犬がお味噌汁を食べても良い?与え方や具材に注意が必要!【2023年版】

【獣医師監修】犬がお味噌汁を食べても良い?与え方や具材に注意が必要!【2023年版】

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頼定 大和

獣医師

頼定 大和

日本獣医生命科学大学卒。大学卒業後、沖縄の病院にて臨床経験を積み、関東、北陸で動物病院の院長として病院経営を行う。 現在は企業病院およびペット関連事業のコンサルティングに携わる。 また、猫の感染症や遺伝病の分野において大学と共同研究に取り組んでいる。講師歴:広島アニマルケア専門学校、日本獣医生命科学大学 動物病院経営学etc. https://okinawa-ahg.com/

昔から日本の伝統食であるお味噌汁は犬や猫にも与えられてきました。「残飯を愛玩動物に与えていた」という方が正確でしょう。そもそも犬がお味噌汁を食べても問題ないのでしょうか?実はよく調べてみると、2つの理由から「食べても問題ないが、具によっては危険」ということが分かりました。詳しく解説します!

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塩分の適切な摂取は不可欠

塩

Imagesines/shutterstock.com

以上が塩分過多によって想定される疾患のリスクですが、犬にも塩分は必要です。上記で述べた通り、犬も塩分によって体の機能を維持しています。塩分が少ないと懸念されるのが低ナトリウム血症です。

低ナトリウム血症は、血清ナトリウム濃度が135mEq/L未満の状態で見られる各症状を指しています。

低ナトリウム血症を発症すると、疲労感や頭痛、食欲不振、嘔吐、極度のナトリウム値の低下で、けいれんや昏睡などの症状が見られます。治療は水分調節とナトリウムの急速な補給が中心となります。

原因として考えられるのは、過度の水分補給や塩分不足です。塩分不足は危険です。低ナトリウム血症を引き起こす代表的な原因として「水中毒」があり、毎年多くの犬が水中毒で亡くなります。

水中毒は、その名の通り水の飲み過ぎが原因で発生する中毒症状です。短時間で過剰に水分を摂取することで、急性低ナトリウム血症を起こし低浸透血症が原因で死亡に至ることもある疾患です。

夏場の運動時や川で遊ばせたときなど、喉の渇きや意図しない水分補給が多くなる機会に発生しやすい中毒です。急性水中毒を発症した場合は、一刻も早いナトリウム補給や点滴を受けないと1~2時間で死亡することもあります。

塩分の適切な補給を

栄養バランスの良いエサ

Javier Brosch/shutterstock.com

話をお味噌汁に戻すと、ネギ類の摂取や塩分過多を避ければ、むしろ健康効果の期待できる食品です。繰り返しになりますが、塩分過多による直接の健康被害やリスクは未だ確認されていません。

しかし、解明されていないことを理由に「問題なし」と結論付けるのは賢明ではありません。確かに、本当に犬は塩分過多によるリスクを一切持たない耐性の強い動物なのかもしれませんが、一般的に考えても、そして実際に生じている犬の高血圧や心疾患、腎疾患などを考慮してもリスクがないとは言えません。

塩分過多が“直接”疾患に結びつかないだけで、むしろ解明されていないリスクの方が多い可能性もあります。以前の日本では、確かにお味噌汁とご飯というシンプルな食餌を与えていたのも事実です。それで長生きした犬もいれば、短命だった犬もいると考えられます。

しかし、全般的にペットの寿命は今よりも短かったのが事実です。現在の市販のドッグフードによる健康管理や食習慣の方が、栄養バランスにも優れ長生きにつながるのは明白です。

塩分過多でも多少は耐えられるのが犬ですが、適切な塩分摂取や栄養バランスを取り入れる方が健康的です。特に、ネギ類を含む場合が多い味噌汁をわざわざ犬に与える理由は特に見当たらない、と言っても過言ではないでしょう。

味噌汁以外にも犬の健康を十分養う食品は多く存在します。体重1~2キロ程度の小型犬が、こぼれたお味噌汁を飲んだだけで数日後に昏睡状態になったケースも多数報告されています。

ネギ類に細心の注意を払ってお味噌汁を与えるぐらいであれば、いつものドッグフードに茹でたささみ肉やゆで卵などをトッピングして、健康リスクのない方法で付加的な栄養を与える方が安全です。

残飯を与えている場合は特に注意が必要

もし、ご家庭で残飯を与える習慣があればより注意が必要でしょう。玉ネギやネギ類の混入以外にも、水分過多やアレルギー発症など懸念される要素が幾つもあるからです。

海鮮物の生食はビタミンB1欠乏症を引き起こすリスクがあり、害のない野菜でも生では消化不良の原因になりやすいものです。

市販のフードには、犬の健康を保つのに十分な栄養素が配合されています。あまりにも質の悪いフードやアレルギーを発症してしまった場合はこの限りではありませんが、基本的にはフードで十分栄養補給が可能です。

時折、健康意識や見た目が生えるという理由で手作りフードにこだわる方もいらっしゃいます。本当に栄養バランスを計算した手作りフードであれば問題ありませんが、写真映えや健康ブームの影響を受けただけの手作りフードでは、大抵カロリーやミネラルの不足、カルシウムとリンの過剰摂取となります。

犬が必要とする栄養素は、人間のそれとは異なります。一例として、人間はビタミンCを外部からの補給に頼りビタミンDは体内で合成できるのに対し、犬はブドウ糖からビタミンCを体内で合成しビタミンDは外部補給に頼っています。

人間に健康的な食事が犬もそうとは限らないのです。カルシウムの過剰摂取は骨の異常や石灰化を引き起こし、リンの過剰摂取はカルシウム不足の原因になります。

それらの栄養バランスをすべて計算し、かつ成長・老化する犬のライフステージや個体差に合わせて新鮮なフードを用意するのは、決して簡単なことではありません。手作りフードが原因で慢性的な栄養失調に陥っており、生涯を通じた栄養失調で早死にする犬も多いと指摘されています。

まとめ

犬は、自分で栄養バランスを考えたり病院に行ったりすることができません。所有する山で放し飼いにし、自分で狩りを行っているというような状況でもない限り、犬は体の健康さえも飼い主に依存しています。

つまり、飼い主には愛犬の命を左右し得る重大な責任があります。犬に与える食餌には十分注意すべきなのはそのためです。お味噌汁を与えるという場合には、ネギ類が含まれていないか、塩分量が多すぎないかよく吟味するようにしましょう。

犬は、塩分が含まれていると多少は食いつきが良くなるようです。とはいえ、「喜んで食べているように見えるから」という理由で愛犬の健康を損ないたくないものです。

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