犬に断耳や断尾をするのはどうして?理由や必要性を徹底解説!
犬の「断耳」や「断尾」と聞くと、耳がピンとしているドーベルマンや、尻尾がないコーギーなどを思い浮かべる方もいるかもしれません。しかしこれらは本来の自然な姿ではなく、人間の勝手な都合でいわば整形された姿なのです。 なぜ断耳や断尾が行われるのでしょうか?ここではその理由や必要性を解説します。
犬に断耳や断尾をするのはどうして?
WilleeCole Photography/shutterstock.com
みなさんは犬の「断耳」や「断尾」という言葉を見聞きしたことがありますか?「断耳」や「断尾」と聞くと、耳がピンとしているドーベルマンや、尻尾がないコーギーなどを思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかしこれらは本来の自然な姿ではありません。人間の勝手な都合で耳を切って立たせたり尻尾を切ったりするなど、いわば整形された姿なのです。
では、なぜ犬種によっては断耳や断尾が必要なのでしょうか?この記事では犬に断耳や断尾をする理由について解説していきます。
断耳する理由とは?
jocic/shutterstock.com
どうして人間は犬の耳を切り落とし、短くするのでしょうか?それには過去の歴史的な背景が関係しており、犬の耳がカットされるようなった理由には実用的な側面があったようです。
断耳が文献に登場したのは、1678年にフランスのジャン・ド・ラ・フォンテーンが著した”Fables”と言われていますので、断耳の歴史の長さが分かります。しかし時間の経過と共に断耳をする必要はなくなったのに、断耳という慣習だけが残されているのが現状です。
断耳の過去の目的
では、断耳にはどのような目的があったのでしょうか?
断耳が行われるようになった理由は、狩猟犬や牧畜犬が熊やオオカミなどの外敵と争ったとき、耳を噛み付かれた際のケガを予防するためや致命傷を負わせないようにすることが目的だったと言われています。中には病気予防のために、耳の通気性をよくするために断耳をしたという意見もありますが確証されていません。
また犬同士が争う”闘犬”や、犬と熊を戦わせる見世物であった”ベア・ベイティング”犬と牛を闘わせる”ブル・ベイティング”用の犬なども、同じ理由で断耳の対象となっていました。
断耳の現代の目的
1800年代に入ると、イギリスを中心として犬のあるべき姿を定めた犬種標準が設けられました。断耳は本来持っていた実用的な目的を失いましたが、犬種標準と呼ばれる規定に合わせるために現代でも行われています。
現代断耳が規定されている犬種には、ミニチュアシュナウザー、スタンダードシュナウザー、ジャイアントシュナウザー、ミニチュアピンシャー、ドーベルマンピンシャー、グレートデン、ボクサー、アーフェンピンシャ、ブービエデフランダース、ボストンテリア、マンチェスターテリア、ブリュッセルグリフォン、ナポリタンマスティフなどが挙げられます。
現在一部のブリーダーは、断耳や断尾はその犬種の完全性と美しさを実現するために欠かせないという考え方をしていますが、2016年に行われた調査で犬の魅力を引き下げていると評価されました。今後どのような展開を見せるのか注目されています。
断耳の方法
断耳は子犬が6週間を過ぎた頃から行われます。少し耳の軟骨が固くなってくるため、この時期が適していると言われていますが、軟骨が大きくなっているのでその分出血量もあります。
動物病院で全身麻酔をし、その犬種に合った切り方でバッサリ切り落とし、その後縫合するという方法が一般的です。断耳術後は、出血や痛みをコントロールするために最低1日以上の入院が必要となります。
その後、傷口のケアそして耳を立たせるために金属製の副木などとともに包帯で固定されます。包帯で固定されている期間は犬種や個体によって差がありますが、最低でも3週間、長ければ8週間必要となることもあります。
およそ1ヶ月ほどで耳がピンと立ち完成してしまう子もいれば1年以上かかる子もいますし、結局耳が立たない子もいます。失敗した場合は再手術が必要となるケースもあるようです。
このように断耳はただ切るだけで完了するのではなく、長期に渡るケアが必要となるため、犬だけでなく飼い主さんにとってもストレスとなる可能性があります。
断耳に伴うリスク
断耳には麻酔の副作用、麻酔が切れてからの数週間にわたる痛み、傷口からの感染の恐れなどのリスクがあります。
また、生まれつき垂れ耳の犬や断耳された犬の場合、耳を動かす能力が生まれつき耳が立っている犬よりも劣っているため、適切なコミュニケーションを図ることが難しくなる可能性もあると言われています。
断耳が禁止されている国
ヨーロッパには「ペット動物保護に関する欧州規定(The European Convention for the Protection of Pet Animals)」という規律の中で、断耳の廃絶が推奨されています。そしてヨーロッパの多くの国では、断耳を動物虐待とみなしています。
断耳を禁止している国はイギリス、スコットランド、ノルウェー、スウェーデン、ルクセンブルク、ドイツ、デンマーク、フィンランド、スイス、ポーランド、オランダ、オーストラリア、フランスが挙げられます。
日本における断耳の見解
日本では犬種標準の管理は「ジャパン・ケンネルクラブ(JKC)」で管理されています。断耳や断尾に関しては容認する見方をしているため、JKC主催のドッグショーなどでは犬種標準どおりの姿をした犬が出場しています。
また、日本には動物関連法令「動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護法)」もありますが、断耳や断尾を禁止する規定は設けられていません。
断尾する理由とは?
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なぜ人は犬の尻尾をわざわざ切り落とすのでしょうか?
それは昔、ヨーロッパでは断尾することが狂犬病の予防となること、背中の筋力を強めること、瞬発力を強めることなどが信じられていたため、尻尾を切り落とすことが慣習化していました。
また、1700~1830年頃のジョージ王朝時代のイギリスでは、尻尾の付いている犬は課税の対象となっていました。そのため、節税目的で多くの犬種の尻尾が切り落とされてたようです。
1796年に税の規定は廃止されましたが、断尾の慣習だけ残され現代に至っています。現代ではすべての犬種ではなく、特定の犬種だけに断尾の慣習が残されています。
断尾の目的
では、断尾はどのような目的で行われているのでしょうか?現代では医学的な目的で断尾されることが多いようです。
たとえば猟犬の場合、尻尾を左右に振りながら深い茂みのある森の中を進んでいくと、尻尾にトゲの付いた植物などで傷を作ってしまい、感染症などにかかる危険性があります。
また牧羊犬の場合は、家畜の群れをまとめる際に、牛や馬などの家畜から尻尾を踏みつけられてケガをしてしまうリスクがあります。
さらに尻尾は肛門付近にあるため便がつきやすく、不衛生な状態になりやすい部位でもあります。このような健康面に関する予防医学を目的として断尾が行われています。
断尾はさらに別の目的でも行われています。それは美容目的です。一般的に犬種には、犬種標準と呼ばれる犬種ごとの理想的な姿が規定された基準が設けられています。この標準基準に合わせるために断尾することがあります。つまり、美容や整形を目的とした断尾です。
慣習的に断尾が行われている犬種には、アメリカンコッカースパニエル、シルキーテリア、オーストラリアンシェパード、ボクサー、ブリタニー、ドーベルマン、トイプードル、ヨークシャーテリア、ミニチュアシュナウザーなど約50種類以上の犬種がいます。
断尾の方法
断尾は大きく分けて2つの方法で実施されています。それは「結紮法(けっさつほう)」と「切断法(せつだんほう)」です。
・結紮法 結紮法は、尻尾をゴムバンドできつく締め付けて血流を遮断させて、結び目以降の組織を壊死させ、自然に尻尾を脱落させる方法です。およそ3日程度で尻尾が落ちます。
・切断法 切断法とは、外科的にメスやはさみなどで尻尾を切り落とす方法です。
通常、生後2~5日程度の子犬に断尾する場合、まだ知覚が発達しておらず痛みに鈍感なので、麻酔をせずにブリーダーや獣医師の手によって行われます。生後8日を過ぎてからの断尾は、痛覚をはじめとする知覚が発達してきているので、断尾することは苦痛になるという理由から全身麻酔での断尾になります。
断尾に伴うリスク
近年犬の尻尾に関する研究が進むことで、安易に尻尾を切り落とすことは悪影響を及ぼすことが分かってきています。
たとえば尻尾にはボディバランスをとるため”舵”の役割がありますが、それを果たすことができず腰に大きなダメージを与えます。
また水中を泳ぐ際は、手足を動かす犬かきと同時に、しっぽをゆらゆらと揺らしながら推進力を作りだすという役割もあります。さらに走っているときも、尻尾を左右に振ることで微妙なバランスを維持しています。
断尾するとこれらの役割を担うことができないため、平衡感覚や身体能力が低下してしまうというデメリットがあります。
断尾が禁止されている国
ヨーロッパでは「ペット動物保護に関する欧州規定(The European Convention for the Protection of Pet Animals)」という規律の中で、断尾の廃絶が推奨されています。そしてヨーロッパの多くの国では、断尾を動物虐待として認めています。
断尾を禁止している国はイギリス、エストニア、オーストラリア、オランダ、キプロス、スイス、スウェーデン、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、ルクセンブルク、ポルトガル、ベルギーなどが挙げられます。
日本における断尾の見解
日本において犬種標準を管理している「ジャパン・ケンネルクラブ」では、断尾に対して反対の姿勢は見せていません。
また動物に関する国家法令「動物の愛護に関する法律」では、動物を傷つけてはいけないという規定はあっても、断尾を禁止する条文は記載されていません。そのため、断尾は獣医師と飼い主さんの判断に任されています。
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