犬や猫につい話しかけてしまうのはどうして?動物に話しかける心理と癒し効果を解説!

犬や猫につい話しかけてしまうのはどうして?動物に話しかける心理と癒し効果を解説!

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動物を見たときに思わず話しかけてしまうという人は少なくないはずです。不思議なことに私たち人間は、言葉が通じないと分かっているにも関わらず、犬や猫などの動物に言葉をかけてしまうものです。それはどうしてなのでしょうか。人間が動物に話しかける心理とそれによる癒やし効果について詳しく解説していきます!

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動物に話しかけてしまうのはなんで?

犬に話しかける少女

lunamarina/shutterstock.com

ペットを飼っているかどうかにかかわらず、動物を見たときに思わず話しかけてしまうという人は少なくないはずです。動物が可愛らしく滑稽な仕草を見せる時や可哀そうに思える時などに、無言で動物と接する人は少ないことでしょう。

不思議なことに私たち人間は、言葉が通じないと分かっているにも関わらず、犬や猫などの動物に言葉をかけてしまうものです。それはどうしてなのでしょうか。

擬人化してしまうから

一つには、人間は擬人観を持つ生き物であり、物や動物を擬人化してしまうことがあるからです。

擬人化とは、ある種の行動や現象を人間の感情表現や行動、またはその目的と同じとみなすことです。特に、自分が持っている意図や目的を投影するケースが目立ちます。

ぬいぐるみを世話してそれに話しかけたり、大切にしている車に傷がつくと謝ったり、使わないものを捨てるときに申し訳なさを感じることも、すべて擬人化による私たちの感情的な反応だとされます。

犬や猫に話しかけてしまうのも、この擬人化が理由となっているようです。人間は他者と関わることで、生きる意味や行動の目的を見いだす社会性があります。どんなに群れることを好まない人でも、他の人なしに生きることは不可能です。

そのため、動物はおろか植物や工作物、人のように見える物体にさえ擬人化して愛着を持ったり、話しかけたりすることがあります。

擬人化には幾つか目的があり、それぞれが各種の心理効果を持っています。例えば、親しみを感じることなどがそうです。親しみは擬人化の最も一般的な目的や効果とも言えます。擬人化によって親しみを感じたり高めたりすることが期待できるのです。

犬を擬人化するとその犬に対して愛着や思いやりが増えたり、すでにそういった気持ちがあることで擬人化を始めたりすることもあります。愛着を抱いたペットを甲斐甲斐しく世話することで自分のエネルギーや感情が無駄にならない感覚を持てるために、より人間らしくいられたりストレスを緩和したりすることさえ出来ます。

誰しも自分が愛し信頼できる人とコミュニケーションを交わしたり、スキンシップを取ったりすることができれば、大きな癒し効果を感じるものです。動物の擬人化ではそれに似た効果をより手軽に得られます。動物に話しかけるだけで、ストレスレベルや孤独感が改善されたという報告もあるくらいです。

ある意味で、動物の擬人化は私たちが自らのためにやっていることなのです。

猫との関係に見る話しかけ効果

猫に話しかける女性

Spaskov/shutterstock.com

どんな動物にでも話しかけることは可能です。犬を飼っている方であれば愛犬に、セキセイインコを飼っている方はそのセキセイインコに、熱帯魚を飼っている方はガラス越しにその熱帯魚に話しかけることでしょう。

全て私たちが自らの頭の中で想像して、自分で作り上げた“ペット像”と取っているコミュニケーションです。しかし、それによって感情的な安定感や、ヒーリング・カウンセリング効果を得られるようです。

2018年にハンガリーのエトヴェシュ・ローランド大学で行われた研究をご紹介しましょう。

この研究では「猫が犬と同じほど人間との信頼関係を築くことが可能かどうか」を知ることを目的としていました。157名の猫の飼い主にアンケートを取り、ペットの猫とのコミュニケーション内容や頻度を調査しました。

この研究により、一般的に女性は男性よりペットとより強い信頼関係を築くことが観察されるとしています。

アンケートで得られたデータは、猫へのコミュニケーション量や複雑さの点で女性は男性よりもより高いスコアを示し、猫の実際のリアクションについても(あくまで主観的ではあるものの)感情の一致が見られたとしています。

例えば、一部の飼い主は「猫に話しかける」「微笑んで挨拶する」「害のあるものを食べたり触ったりしてはいけないと説明する」ようです。

そうすることによる猫への直接的な影響や利点はないものの、その飼い主たちは「猫が飼い主の幸せを気にしている」「励まそうとしてくれている」と考えていました。それは実際に猫への愛情を強め、感情的な絆を(人間目線ではあるが)育むのに役立つそうです。

実際の体験談として、「飼い主が笑っていると猫が遊ぶ」「物を指すと猫がそちらを見る」ことを挙げ、猫が人間の親友になり得る、猫は感情的な一致を示すサインを学ぶ機会が多くあるなどの点を指摘しています。

あくまで飼い主のアンケートに基づく研究であり、実際に猫の脳波や反応を測定したわけではないようですが、飼い主はペットとの触れ合いによって大きな安らぎや気持ちの共有を得ていることを示す興味深い研究です。

アニマルセラピー

アニマルセラピー

Photographee.eu/shutterstock.com

動物に話しかけることで得られる効果を示すもう一つの例として、アニマルセラピーが挙げられます。

アニマルセラピーは日本語では動物介在療法と呼び、疾患の治療に動物とのふれあいや接触を取り込むことで、治療補助や生活の質の向上を目指します。

・アニマルセラピーの効果

アニマルセラピーの厳密な効果に関しては、未だに様々な議論があります。アニマルセラピーそのものが効果を研究しにくい内容であり、より厳密な研究方法が確立されていないことがその理由です。

アニマルセラピーの効果の強さに関してもあくまで個人差が大きく、主な治療方法ではなく補助的なセラピー効果を持つものとしての立ち位置であるため、実際の効果を示す基準や測定結果を出すことは困難です。

ここまではアニマルセラピーのネガティブな一面を挙げてみましたが、医学的な根拠が確立されているかどうかにかかわらず、世界中の医療現場で取り入れられつつある補助的な治療法として広く知られています。

・アメリカにおけるアニマルセラピーの実態

アメリカでは1944年から、イギリスではなんと1792年から治療に使われているとも言われ、アニマルセラピーの対象となる疾患も心臓病や高血圧、エイズ、精神疾患など多岐に渡ります。

特に、精神的なダメージを受けた子供たちに対する効果が注目を集めており、虐待や死別などによる心の傷を負った子どもたちが、通常のカウンセリングやセラピーを受けやすくする効果があるとされています。

銃の乱射事件で大勢の子供達を亡くした学校で、実際にアニマルセラピーを取り入れる事例もあり、学校内で校舎や人ごみの間を自由に行き来し、そばにいる人が触れるに任せている環境を作り上げているとのことです。

・オーストラリアにおけるアニマルセラピーの実態

いくつかの老人ホームでアニマルセラピーを取り入れたというオーストラリアでのケースでは、そこに入居している高齢者の会話量や行動に変化があったとか、日常行事への参加が増えたという報告がなされています。

リハビリを必要とする患者の場合、辛くて長期間になりがちなリハビリを動物と行うことで(一例として、ボールを投げて犬にとってこさせ、腕を使う運動を行う)、リハビリをより快適に長期間続けさせることができた、ともしています。

・イスラエルにおけるアニマルセラピーの実態

統合失調症やADHD(注意欠陥多動性)の患者にアニマルセラピーを導入したイスラエルの研究では、犬を一緒に参加させたグループの方が治療を続けて行く意欲や感情表現の面で改善が見られたと報告しています。

・その他の事例

その他にも、世界各地で「外科手術の直前に患者に熱帯魚を見せたところ、緊張状態が緩和され患者が落ち着いた」「心臓発作で入院している患者のペットの有無を調べたところ、ペットを飼っている患者の一年以内の死亡率が、ペットを飼っていない患者のそれに比べて1/4以下だった」

「ペットを飼っている高血圧に悩む人の数値は、ペットを飼っていない人のそれに比べて低かった」など、アニマルセラピーによって効果が得られた非常に数多くの事例が報告されています。

ストレスやうつ症状など、精神的な疾患や障害を抱えている方の場合でも、動物とのふれあいを少しでも増やすことで症状の緩和や改善が見られているという報告も後を絶ちません。

もちろん、これらの研究結果や報告内容は統計的な研究や調査に基づいており、科学的な手法で有効性を示す証拠が得られた訳ではありません。効果が比較的不安定であることや、再現性(どんな状況またはどんな人でも同じ効果が得られるか)において、確たる証拠や観察結果が得られていないことは事実です。

実際に運営していくにあたっては、動物をきちんと世話していかなければならないため、衛生基準などの課題があります。アニマルセラピーに使用されていた動物たちが死ぬことで、ペットロスと呼ばれるさらなるうつ状態や落ち込みを経験するというリスクもあります。

しかし、疾患を治療する上での補助的な治療法やセラピーとして世界中で受け入れられ、かつ実際に効果があったとする報告が数え切れないほど見られることも事実です。

施設内にただ犬や猫を放し飼いにして、利用者が気の向くままに話しかけたり触れ合ったりするだけでも、補助的な治療法としては絶大な効果を発揮するようです。

特にうつ病やPTSD治療では肯定的な意見が多く、アニマルセラピーは主要な治療法としては利用出来ないものの、それらの効果を向上させたり改善させたりする力があることが推察されます。

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