「リビアヤマネコ」の由来や特徴、「イエネコ」との関係について
mofmo編集部です。
あまり聞き慣れない名前の猫である「リビアヤマネコ」ですが、実は一般的に飼育されている「イエネコ」の先祖に当たる猫と言われています。今回は、私達にとって非常になじみ深い「イエネコ」のルーツを探る為に、リビアヤマネコについて由来や特徴、性格などについて調べました。
「リビアヤマネコ」以外で、人間と暮らしていた「ベンガルヤマネコ」について
Axe_milk/shutterstock.com
これまでご紹介してきたように、全てのイエネコの祖先はリビアヤマネコです。
しかし、「ベンガルヤマネコ」も人間と共存していた跡が発見されています。
ベンガルヤマネコは、特徴的な斑点があり、一見すると「チーター」のような被毛をしている野生の猫です。
「ロシア」や「中国」など、アジアなどに広く生息しているヤマネコです。
中国の農村地帯で発見された遺骨を解析した結果、5000年以上前に人間と一緒に暮らしていた猫が「ベンガルヤマネコ」である事が判明しました。
同じ動物が、異なる時代や地域で家畜化するケースは非常に珍しく、この事実が発見された当時、中国でもヤマネコが共生していた跡が発見された事は、研究者の間では大変大きなニュースとなりました。
しかし、今のイエネコには、ベンガルヤマネコの血は引き継がれていないので、リビアヤマネコのように、自然な遺伝子変化によって現在のイエネコの祖先になる事はありませんでした。
現在では、ベンガルヤマネコとイエネコを人工的に交配する事により、「ベンガルネコ」という種類の猫が作出されており、可愛らしい風貌で親しまれています。
「ヤマネコ」と「イエネコ」の違いについて
生物学的な分類でいうと、「リビアヤマネコ」と「イエネコ」は、同じ「ヤマネコ種」に分類されています。
厳密に言うと、ネコ目ネコ科ネコ亜科ネコ属ヤマネコ種に属しています。
しかし、ヤマネコは人間からは離れて暮らしている野生の猫です。
一方、イエネコは、長年にわたる人間との共同生活によって、野生の「リビアヤマネコ」にはない、可愛らしい特徴を身につけました。
例えば、イエネコは飼い主の事を信頼しているので、平気で体の上に乗ってきたり、自分が寝たい場所を確保する為に、人間や犬などを押しのけて自分のスペースを確保する場合があります。
野生の猫であれば、本来人間や犬などの他の生き物を敵と捕らえているので、そうした動きをする事は考えられません。
しかし、イエネコには、野生の一面が残っているので、虫やネズミなどの小動物を目にすると、ハンターとしての血が騒ぎ、突如狩りの姿勢に変わる事もあります。
「リビアヤマネコ」と「イエネコ」のDNAに関する研究について
ヤマネコからイエネコに変化する遺伝子が、かつては特定されていなかったので、リビアヤマネコがイエネコの先祖であろうと考えられていましたが、科学的な根拠は希薄でした。
しかし、2014年に米国科学アカデミー、通称PNAS(Proceedings of National Academy of Sciences)において、ヤマネコからイエネコへと遺伝子が切り替わった、明確なポイントを研究した結果が発表されました。
その研究結果によると、猫のゲノムのシークエンス配列(ゲノムを構成するDNA分子の塩基配列)を識別する事によって、野生の獰猛なヤマネコがどのようにして人や他の動物に慣れ、共生できるようになったのかが解明できるそうです。
この貴重な研究を発表したグループは、猫が初めて人間社会と接点を持ったのは、9500年前に中東で農業を行ない始めた集団だったと考えました。
もともと砂漠で自由に暮らしていたヤマネコですが、穀物倉庫に群がったネズミなどのげっ歯類に引き寄せられて、人間の住む村に近づくようになり、やがて人間に飼育されるようになりました。
そこから、数千年の時を掛けて、ヤマネコの体は少しずつ小さくなり、どう猛な性格も徐々に失われて、現在知られるイエネコの姿に変化していきました。
研究を主導していたワシントン大学医学大学院の「マイケル・モンタギュー博士」は、イエネコのゲノムの、未決定の塩素配列を明らかにする事によって、遺伝子の同定に成功しました。
また、肉食獣であったヤマネコの食生活を激変させた、脂肪代謝に関わる遺伝子など、ヤマネコからイエネコへの変化を明らかにする281もの遺伝子を突き止めました。
この研究チームが、22種類のイエネコのゲノムについて、中近東に生息する「リビアヤマネコ」と「ヨーロッパヤマネコ」を比較した結果、野生的な性格から、人間などの他の動物に友好的な性格へと変化をもたらす効果が認められる13の遺伝子を発見しました。
それらの遺伝子は、エサを食べる時の警戒心や、生活する環境に対する認識を変化させる働きがあると考えられています。
この遺伝子はマイケル・モンタギュー博士によると、「我々が知っている家畜化された猫(つまりイエネコ)と一致する」そうです。
オックスフォード大学で、豚や犬などの動物を家畜化する研究を行なっている進化生物学者である「グレーガー・ランソン氏」は「この研究結果は、今までの中で最も決定的な証拠となる発見です」と語っています。
ただ、犬と比較して考えると、まだ疑念が残る点もあるようで、研究共同著者の「ウィリアム・マーフィー氏」によると、犬より猫の方が野性的な理由は、「猫は犬のように狩りなどの目的で飼育されなかったためです」との事です。
つまり、昔も今も、猫は家にいたりいなかったりという、他の家畜とは大きく異なる独自のライフスタイルで人間に親しんでいるので、イエネコと言っても、犬などとは違い半飼育の状態で家畜化されているという点を指摘しています。
いずれにしても、遺伝子的な研究によって、現在世界中で飼育されている猫の先祖が特定され、リビアヤマネコとイエネコで性格の違いを決定している科学的な要因が明らかにされていると言うのは、非常に興味深い点です。
リビアヤマネコを飼育するには
リビアヤマネコは、ワシントン条約において取引が規制されている動物ではありませんし、特定動物(人に危害を加える恐れのある危険な動物)でもありません。
その為、日本国内において、都道府県知事や政令市の市長の許可を申請する必要なく、誰でも飼育する事が「法律的」には可能です。
実際、リビアヤマネコを販売しているインターネットサイトもあります。 値段は50万円程度で取引されているようです。
しかし、獰猛な性格をしており、また、体臭なども強い為、周囲の人に迷惑をかけてしまう可能性も高い猫です。
イエネコの祖先とは言え、飼育方法も一般の猫とは全く違うので、安易な飼育は避けましょう。
そうした飼育の難しさを差し引いても、リビアヤマネコを飼いたいと強く願っている方は、ご自身の住まいや近隣の住民の反応など、生活環境も考慮に入れて、飼育できる状況を整える事が可能かどうか、事前によく検討される事を強くおすすめします。
また、飼育経験豊富な専門家や獣医などに、事前によく相談し、飼育する際の注意点などを確認しておく必要もあるでしょう。
リビアヤマネコについてのまとめ
Edwin Godinho/shutterstock.com
数あるヤマネコの中から、リビアヤマネコだけが人間に懐き、世界中で飼育されているイエネコの唯一の祖先となったと言う事を考えると、妙に親しみを感じる方も多いのではないでしょうか。
人間と共生する為に、本来持っていた野性的な性格から、人を警戒せず、慣れ親しむ性質へと遺伝子レベルで変化を遂げたと言う事は、驚きの事実です。
そうした経緯について考えると、かまって欲しいと近づいてくる猫がとても愛おしく思えます。
しかし、変化を遂げたイエネコとは異なり、現在生息しているリビアヤマネコは、依然としてどう猛な一面を持っているので、飼育を検討している方はくれぐれもご注意ください。
※表示価格は記事公開時点の価格です。
-
- 愛犬と一緒に出社する夢を実現した富士通『ドッグオフィス』に行ってみた!
- “愛犬と一緒に出社する” ワンちゃんを飼っている社会人なら憧れる人も多いのではないでしょうか。そんな夢のような取り組みを富士通は大手企業ながら実現してしまいました。富士通が愛犬家のためにどんな取り組みをしているのか新たに設立された【ドッグオフィス】を取材してきました!
- 犬の生活
-
- 【2023年版】東京都内の犬と入れる人気ドッグカフェ一覧をご紹介!【63店舗】
- 愛犬と一緒に楽しめる東京都内のドッグカフェを紹介しています。わんことのお出かけ中、乗り換えのついでに立ち寄るのにピッタリのお店や、遠くからでもわざわざ訪れたくなる魅力的で新しいカフェで愛犬と一緒にまったり過ごしましょう!
- 犬のお出かけ
-
- 【犬好き必見】歴代の犬ポケモンランキング!最新作の犬ポケモンまとめてご紹介!
- 11月18日にポケモンシリーズ最新作「ポケットモンスタースカーレット」「ポケットモンスターバイオレット」が世界同時発売しました。そこで、今回は「歴代の犬ポケモン総まとめ」をお送りします。今までポケモンに興味がなかった方も、可愛くてかっこいい犬モチーフのポケモンにメロメロになっちゃうかも。
- 犬種図鑑
-
- 【獣医師監修】犬が口をくちゃくちゃする理由を解説!意外な理由と注意点を解説【2023年版】
- 犬が口をくちゃくちゃと動かしている様子を見たことがあるでしょうか。不思議な仕草なので、普段から気になっている飼い主さんも少なくないと思います。今回は口をくちゃくちゃする理由を紹介します。
- 犬の気持ち
-
- 【2023年版】セルカークレックスってどんな猫?性格と特徴からわかる飼い方のコツを解説
- セルカークレックスという名前の猫を知っていますか?チリチリっとした毛が特徴的な猫ですが、まだあまり知られていないかもしれませんね。今回はそのセルカークレックスの性格、特徴、飼い方をご紹介していきますね!
- 猫と暮らしたい
-
- 【2023年版】三毛猫のオスが希少なのはどうして?理由を詳しく解説!
- 典型的な日本の猫としておなじみの、三毛猫。実は三毛猫には、圧倒的にメス猫が多いって知っていましたか? オスの三毛猫というのは滅多に生まれず、とても値段が高いんです! でも、一体なぜなのでしょうか? 理由を科学的に解説します!
- 猫と暮らしたい
- コメント
三毛猫には、ほぼメス猫しかいないという事実にびっくりしました。だからこそ、三毛猫のオスは希少性が高く、高値でやり取りされているということなんですね。あまり猫ちゃんの性別をよく考えたことがなかったので、衝撃的でした。
-
- 【獣医師監修】生後4ヶ月の子猫の育て方を詳しく解説!平均体重や餌の量をご紹介【2023年版】
- まだまだ小さい生後4ヶ月の子猫ちゃん。子猫はどんどん成長しますから、それに合わせた大きさと餌を考えなければいけません。立派な猫に成長するのにも欠かせない生後4ヶ月の子猫の育て方について調べてみましょう。
- 猫と暮らしたい
- コメント
うちのラグドールのメスは4ヶ月で2.7kgくらいです
-
- 【2023年版】お年寄り猫がかわいい!年齢を重ねることで出てくる魅力をご紹介!
- 子猫がかわいいのは当然ですが、実は猫が本当にかわいいのは老猫時代といわれています。老猫は若いころの活発さはありませんが、飼い主さんと過ごした時間が長ければ長いほど信頼関係が深まり、より一層かわいい姿を見せてくれるからです。この記事では、老猫の隠れた魅力と飼育する時の注意点をご紹介します。
- 介護・老猫
-
- 【最新版】キジ白ってどんな性格?キジ白猫の特徴や飼い方をご紹介!
- 日本猫で一番多くみられるのはトラ猫ですが、トラ猫は「キジトラ」「サバトラ」「茶トラ」の3種類があります。そんなトラ猫の中でも白い毛が混じっているものを「キジトラ白」「サバトラ白」「茶トラ白」と呼びます。今回は、この「キジ白」と呼ばれる猫をピックアップし、性格などの特徴や飼い方を紹介したいと思います。
- 猫と暮らしたい
- コメント
めちゃくちゃビビリで心配していましたが、これも個性なんですね。安心しました。それと確かに活発で、柱の鴨居の位置まで駆け上がったりしてます!笑
mofmo掲示板
-
- 皆さんは、ペットが万が一脱走した場合の対策などありますか?
- 犬を飼って1年経ちました。トイプードルです。 我が子のように可愛いです。迷子になったらどうしようと、ふと考えてしまい 皆さんは、迷子になった際の対策、ならないようにする対策などあるのでしょうか?
- コメント
入り口にゲートを付けていることと、首輪に住所や連絡先を書いていますね。まぁマンションなので脱走しても同じ階のフロアをうろうろするくらいなんでしょうけど。
-
- 猫のいたずらが止まりません!トイレットペーパーまで無残な姿に!
- 猫のいたずらが度を越えてきました。ついには、噂できいていたトイレットペーパーまでも餌食に・・・。 対策ありますか?
- コメント
トイレットペーパーは猫が触れないようにしておくのは鉄則です。トイレに入れないようにするのはもちろんだし、予備のペーパーはケースに入れておくぐらいの対策はしないと猫のイタズラを予防しきれません。加齢とともに無くなっていくかは保証できないなぁ
-
- 猫去勢費用。平均いくらですか?
- 里親になりました。子供の頃に猫をかっていましたが、20年ぶりに家族に迎え入れます。 去勢を考えていますが、平均どのくらいの費用と入院期間が必要なのでしょうか?
- コメント
うちの場合は去勢(オス)が1万7000円前後、不妊(メス)で2万8000円前後でした。体重によって5000円程前後します。それに、我が家は多頭飼いし始めだったため、年に何回かお願いしたので2匹目からは2000〜3000円程の割引がありました。 ただ、保護猫限定なのかは不明ですが、隣県の方から猫をもらった時、不妊手術の証明で領収証をもらいましたが、7000円でやってくれる病院もあるようです(ちなみにその猫さんはさくら耳ではありません)。 地域と保護猫かどうか、あとは病院によって違いがあるようです。
リビアヤマネコといえば、ムツゴロウさんも触れ合っていましたね。子猫でも威嚇していましたので、いかに彼らの獰猛性が伺えました。指を噛ませて慣らしていましたので、少しずつ距離を縮めていくことが重要でしょうね。
リビアヤマネコは野生種なので、筋肉も非常に発達しているのが特徴ですよね。性格は大変獰猛で、人間に慣れることはほとんどないというので飼い猫には向いてないかもしれませんね。ただ、中には懐く猫もいるかもしれません。